「仕事は楽しいんだけど、量が7割だったらいいのになァ」
本音だが、会社員としてはなかなか不謹慎な発言である。編集業は時間が無限にかけられる業態で、こだわりはじめれば際限がなく、むしろどこで手を引くのかがすごく難しい。さらに、縦にも横に幅広い知識と高い人間性が求められるもんだからインプットも立ち止まれない。まさに知の総合格闘技系の仕事の一つだ(と私は思っている)。
本当は少し仕事の量を少なめにして余白と余裕をつくり、情熱と時間を増やしたらもっといい企画がつくれるのでは?という思いがしょっちゅう頭をめぐる。あと、まとまった大きな仕事をすることもできるようになるのでは……?とか。
しかし、それがなかなか難しい。クライアントからは色々頼まれるし、会社としての売上の話もあるし、仲間の助け合いという視点もある。そういう小さな仕事が積み重なって、いつのまにか大事なことに時間が割けなくなってしまう。これは精神的にもイマイチよくない。
フリーランスの世界では、仕事の断り方が大事だと言われる。実は、会社員も同じくらいに「断る力」が大事で、しかも会社の中で波風立てずに断る力が大切なんだろう。もちろん、テクノロジーで無駄を省くことは大切だが、そもそもの入ってくる量を減らすのだ。
新卒で別の会社にいた時、私は頼まれれば断らない人だったし、まわりにもお願いを断られたことはなかった。プロパーが強いし、クライアントからの依頼で対応中心の広告会社だったから、助け合うのが当たり前という企業文化だったのかもしれない。
今の会社もみんな優しい。だが、最初は頼んだことを「ちょっと今やるのは難しいです」などと断られたときはびっくりした。
たくさんのことをやりすぎると人はカンタンにパンクしてしまう。だから、「これはやめたほうがいいんじゃないですか?」をちゃんと社員が社内で言いあえるのは、生意気に見えて風通しのいい会社の証拠な気がする。フリーランスの方と仕事をしている人が多いからかもしれないですが。
人間の能力という資源を適切に配分するためには、不必要なこと、過剰なことを断り、得意なことを引き受けていったほうがみんな幸せになれるはず。うーん、理屈では分かるけど、会社員の断る力の実行、個人としてはすごく難しいままなのよなぁ。