映画『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』を観た。いわずもがな、雪組公演「海辺のストルーエンセ」と同じ題材の作品である。デンマーク史にはそこまで詳しくないが、セットも衣装も非常に豪華だった。
主な登場人物は、病のたまに精神的な不安定さをもつデンマーク国王・クリスチャン7世と、イギリスから嫁いできたその妻・カロリーネ・マティルデ。そして、最終的には王の代行者となる侍医・ヨハン・ストルーエンセ。
啓蒙主義思想家でもあった、ストルーエンセ。古いしきたりと病気の王を軽視する枢密院に対して、王と王妃、そしてストルーエンセは協力して改革を行う。しかし、その動きは急激すぎて貴族からの反発を招き、同時に王妃との不倫も国民から責められ、処刑。結局、社会も元に戻ってしまった……。
王妃を寝取られるというのは王としては屈辱的な話だから、当然クリスチャン7世は激怒するものかと思いきや、映画の中では「お前(ストルーエンセ)が好きだ」「お前といると面白い」などのセリフがあり、人間としての好意のベクトルは完全にストルーエンセに向いている。
王妃はストルーエンセに恋愛感情を向けているわけだし、いかに彼が人間として魅力的で、好かれてしまう人だったのかを考えてしまう。さすがに枢密院からは嫌われるものの、処刑後まで「死ななければよかったのに」と王に言われるレベルで、心を掴んでいるのがすごすぎる。
私も仕事をしている中で「誰もがこの人を好きになってしまう」と思うような、魅力的な人物に出会うことがある。個人的にも強い親しみを感じ、人間的に好きだなぁとついつい軽率に惚れ込んでしまう。
好きな人達と仕事をするのはとても楽しいことだし、大事な要素だ。でも、うっかり近視眼的になって、他の人の言葉が聞こえなくならないように気をつけないといけない。
実際のストルーエンセがどれくらい野心をもっていたのかはわからないが、誰かを好きで信頼しすぎた結果、思いがけない方向にいってしまうこともあるのだ。魅力的すぎる人との付き合い方とは、なんと難しいんだろう。
ちなみに、ストルーエンセの死後にクリスチャン7世の息子が起きたクーデターで、この急激な改革施策が復活したらしい。これはつまり、改革の内容自体は的を射たものだったということ。
やり方、時期、スピード感、そして倫理観。何をやるかだけではなく、どうやるか、誰とやるか、誰がやるかで、結果は全く変わってきてしまうのだなぁ。