それはやめましょうという勇気

なぎなたの試合競技のお稽古中、どうしたらもっとうまくなるのだろう?と考えて、先輩を見ていることがある。すると、シンプルに動きに無駄がない。もともとなぎなたの体の使い方は非常に合理的なのだが、試合の中にもその合理性が生かされている。

無駄をなくす。そのときに思い出すのが、わたしが尊敬するクライアントに言われた「それは、オーバーワークですよね」という言葉である。

私は、いわゆるクライアントからの依頼を受けて記事コンテンツを中心に企画・制作を行っている会社に務めている。ゴールである納品物に向かってさまざまな工程があり、やるべきことがある。

「できるだけいいもの」をつくりたい気持ちがあるからこそ、リソースのゆるすかぎり……ときには、リソースの限界を超えて作業をしようとしてしまうことがある。もちろん、発注者側としては同じ金額でよりよいものを作ってくれるならばありがたいに違いない。

だからこそ、「それをやってもらえたらすごいですが、さすがにオーバーワークなので、その作業はやめましょう。そこまでは必要ないですよ」など、過剰な作業を止めてくれるクライアントに初めて出会ったとき、すごいなぁと思ったのだ。

わたしも相手も、時間は有限である。そして、体力も精神力も限られていて、残量が減ってくるのに比例してクォリティが落ちやすくなる。もちろん、気力でなんとか頑張るという手もあるのだろうが、持続可能性がない。

だからこそ、もっといいものになるかも?と思うと、止めるのには勇気がいる。そこのラインをうまく判断して相手を止めてくれるのはなんて仕事ができるんだろう……と関心してしまった。

相手に何かを頼む中で、無意識に過剰なことを頼んでいないか、これはいらないかも?と思いつつも引き受けすぎていないか。断るのは難しいときもありつつも、考えていく。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ