中国SFを耳で読んでみて

SF小説『三体』の本編を読破した。1960年代から始まった物語が、こんなところまで行くとは。歴史書を読んでいるようなあまりの壮大さに大変心を打たれた。世界で評価される名作だ。

昨年はSF小説『銀河英雄伝説』シリーズを全巻読めた、大満足だ。もともと、そこまでSF小説に詳しいわけではないのだが、オーディオブックを使ったのが読破できたコツだと感じる。SF小説は、オーディオブックとの相性が良いと思う。

目をつぶっていても耳から流れてくる風景描写をもとに豊かな想像ができるし、めまぐるしく変化する展開も音だと一層迫力を感じる。

ちなみに、文章で読むと飛ばしてしまいそうな部分も音ならば拾える。『三体』はオーディオブックで聞いた後に、書籍版も見てみたが、自分でも驚くほど細かいところまで覚えていた。(ただし、意識をある程度、向けられていることが条件だ)

1点、銀河英雄伝説と違った難点もあった。それは、名前の読み方である。たとえば、『三体Ⅲ』のメインキャラクターは、程心(てい・しん/チェン・シン)、雲天明(うん・てんめい/ユン・ティエンミン)という名前だ。

オーディオブックでは、カタカナで表記した中国読みで読み上げられる。私はキャラクターの名前も音で覚えられる人なのだが、そうでないとなかなか大変だろうと思う。

また日本語話者からすると、性別がさっぱりわからない。さらに、日本語版読者の中には日本語読み(ひらがな)を使ってキャラクター名を覚えている人もいるはずだ。そうなると、その人と同じキャラクターについて話し合うのはなかなか困難になる。

英訳版では、おそらく中国読みがそのまま英字翻訳されているだろうし、中国では当然中国読みをしているわけだから、日本語版読者のみが漢字・日本語読み・中国読みの3パターンが頭に入ってきて翻弄される……というわけだ。言語の不思議。

逆に言えば、そこだけ気をつければオーディオブックで三体を読むのはかなりおすすめである。分厚い本を敬遠気味の方にもぜひ挑戦してみてほしい。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ