言葉は温度、環境

妊娠・出産についての本を読む機会があった。本質的には自然な行為だったとしても、経験がなければ知らないことだらけ。人体って、シンプルにすごい。誰だ、こういうのを作った人は。

そんなふうに生命の神秘に心を奪われていたのに、ふいに冷水を浴びせられたと感じる瞬間がある。

例えば、産後のためにやっておくべきことについて。私が読んであった本にはこう書いてあった。

・ママの目が届きやすいところに赤ちゃんのベッドを置く
・ママが掃除しやすいように片づけておく

ん〜〜? なんで、ママだけ?? シングルマザーになる人への配慮なのか……? いやいや、たしかに読者の中にはシングルで妊娠出産をする人も思うけど、その場合でも他の家族を含めた他人に助けてもらうこともあるだろうし、掃除や子どもを見ていることができる大人が、他に全くいないことはないだろう。なぜママだけ名指し?? 

やはり実体験がない分、かすかに不安もよぎるが、一編集者としては、

・目が届きやすいところに赤ちゃんのベッドを置く
・掃除しやすいように片づけておく

で十分だと思えてならない。

言葉は、温度だ。暑いところにしばらく滞在すると、それが当たり前になり、少しずつ体と心が順応していく。冬の寒さにも、夏の暑さにも私達はちょっとずつ慣れていく。私はこの言葉の温度慣れてしなくて、本を閉じてしまった。

でももし私が妊婦で妊娠期間中にずっとこういう情報に接していたら、「ママ」だけにふいに押し付けられる責任や重圧にも慣れてしまうのかもしれない。でも、それって今っぽくない。負担が大きすぎるし、パパ側も阻害されていることに慣れてしまう。

まだ、この温度に慣れていない今のうちに、気づけてよかった。忘れないぞ。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ