世間話の能力

初めて会った人と話をする。取材を生業にしているので、そういうことはかなり頻繁にある。

また、プライベートでもよくある。今日は、特にすごかった。たまたま閉店間際に迷い込んだ49年続く喫茶店の女性オーナー(おそらく78歳、もちろん初対面)となんと3時間連続でおしゃべりしてしまった。しかも、注文する前に会話が始まったので、なんと何も注文せず、お会計もなく終わってしまった。なんだったのか、あれは?

コロナでお客さんが減っている話から、オーナーのひろこさん(名前も教えてもらった)が店を開いた時の話や内装のこだわり、年末にテレビに出た話、スマホの困りごと、常連さんの結婚相手の評判、介護問題、茶道具、あげくの果てに店の中で2年近く充電されず眠っていた旧式のMacBook proを起動して使い方を教えてあげたり、LINEを交換したりした。なんだったんだ、あの時間は。

でも、めっちゃ楽しい。ひろこさんはすごく明るくて楽しくて、頭の回転が速い人だった。テレビに出たときも、ディレクターが密かにお客さんとして何度も食事に来て、店の雰囲気を観察された上で選ばれたらしい。ほかのお客さんにも、こんな調子だったならば、選ばれるのも納得である。いやあ、この迷い込み具合は旅である。ちなみに、夕飯は食べそこなったので、コンビニで買ったスープを帰り道で歩きながら飲んだ。

喫茶店で3時間もおしゃべりしたくせに、今日の宿に戻ったらさらに2時間くらい宿のオーナーやお客さん(こちらも初対面)としゃべった。この喫茶店での出来事も、割とウケたはず。深夜まで続いていてちょっと眠かったので、聞き手中心だったが楽しかったなあ。いやあ、この訳がわかんなさこそが旅である。

私も昔はこんなにゆるい会話が得意じゃなかった気がするから、やっぱりバックパッカーをちょっとだけしていたのが功を奏しているのかもしれない。ちなみに、シラフである。私は、ずーっとシラフのまま、この調子で何も気にせず適当にしゃべっていられるのである。

ゲストハウス、コワーキングスペース、一人旅。だいたい、その場の感覚で誰かと知り合って、その場を楽しむ。いつの間にか、そういう能力と雰囲気が身についていたのかもしれない。(迷子の人も含め、割と話しかけられ体質なので、もしかしたら暇そうに見えるのかもしれない)

以前、年下の方とお話したときに「よく知らない人とは何を話していいか、わからない」と言われて、ハッとしたことがある。すでに今の自分にはあまりそういう感覚がなく、その悩み自体がわかっていなかったのだ。

今は、タイパ、コスパなんて言われていて、さらによくわからない感染症が蔓延して出会いのない時代。年代も、属性も、バックグラウンドのすべてを捨てて、その場で適当に話す機会って意外となくなってきているのかもなぁ。個人的には、ちょっともったいないし、寂しいなと思う。

ちなみに、この能力は編集業以上に、コワーキングスペース運営業でものすっごく、めちゃくちゃに役立っている。ドロップインの人をもてなすのも会員さんと仲良くなるのも、結局のところ入り口は雑談なので。今後も、いい感じにやっていこうと思います。気が長い。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ