ゆるされた経験がないと、ゆるすことはできないのか 〜『レ・ミゼラブル』(帝国劇場)を観て〜

現在、帝国劇場で公演中のミュージカル『レ・ミゼラブル』を観ました。ストーリーは知っていたのですが、まだミュージカルファンとして経歴が浅い私にとっては初観劇。

キャスト、音楽、舞台装置、照明……どれも素晴らしく、演劇史に残る名作と言われるのがよくわかります。

個人的には、
・冒頭の銀の燭台シーン
・ジャン・バルジャンの最期
は涙が止まらず、泣き始めながら観て、泣きながら観終わりました。

レ・ミゼラブルには大きなテーマがたくさんありますが、その中でも私に撮って一番大きいのは「ゆるし」です。

パンを盗んだ罪が積み重なり、19年の投獄をされたジャン・バルジャン。そこで受けた仕打ち、そして仮釈放時に経験した冷たい扱いから、社会に対して強い恨みを持っていきます。そこで、司教さまに助けられるものの、結局は銀の盃を盗んで逃げ出します。結局、村人に捕まるものの、司教さまが現れ「それは私が差し上げたもの、銀の燭台をお忘れですよ」と伝える……。

これは、タイトルが出る前に演じられるシーンで、その後のジャン・バルジャンの生き方、考え方を決定づけるシーンです。結局、自分が許されたと感じるのが原体験担っている。

「罪を犯した自分」とどう向き合うか……。映画『プリズン・サークル』を観たときも感じたのと同じ気持ち。社会に強い恨みを抱く状況に陥ってしまった人、罪を犯してしまった人。

彼らに対して、社会の一員としての私はどういった眼差しを持ちたいのかを考えさせられました。人間の変化の可能性を信じる以上、寛容でいたいですが、なかなか現実問題としては大変なのもわかっています。

その後も、身代わりの人が処刑、コゼットとマリウスの関係をどうするか、ジャベールとの向き合い方など、たくさんの葛藤が描かれ、最期へ。その時、演出を冷静に見つつ、気がついたら涙が止まらなく……。休憩含めて3時間の舞台なのに、もっと長くゆっくりと何かを味わったような不思議な気持ちになりました。

ほかにも個人的に好きだった部分をまとめます。

・生田絵梨花さん演じるエポニーヌ。とっても愛らしいのに、パワフルで、ひたむき。必死に生きていることが全身の表現でビリビリと伝わってきました。

・濱田めぐみさん演じるフォンテーヌ。お歌のうまさは当然ながら、短い出演時間なのに存在感。ジャン・バルジャンがココロを動かされるのもわかる……。

・バリケードのシーンの大道具と照明。特に一人ひとりが倒れていくシーンは圧巻でした。見せ場なのですが、ここまでしっかりと素敵な装置が作れるのは何度も再演できる作品の力があるからですね。

・ジャベールの最期。もともと、ジャン・バルジャンへの思いを語っていた橋の上から飛び降りる演出ですが、舞台の中であそこまで飛び降りを見事に表現しているのは始めてみました……。まさに闇の中に消えていく……。

こういうところを楽しむだけでも、はっきり言って「この値段でこんな経験をさせていただき、ありがとうございます……」となってしまいました。

あと、カーテンコール。スタンディングオベーションになっていましたが、センターはコゼット、バルジャン、マリウスだったのですが、吉原さんバルジャンがはけるときに、コゼットをマリウスに引き渡すみたいなポーズをとったんですよね。最後まで、バルジャン!!

2回目は、バルジャンとジャベールが背中をたたき合いながらの幕引きでした。す、すごい……! この二人の関係が描かれている!!と最後の最後まで、「ゆるし」について考えながら感動してしまいました。

本当にレジェンドな実力派揃いの『レ・ミゼラブル』。まさに、名作ミュージカル。社会背景よりも個人の物語なので、誰にでも進められる作品です。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ