結局、心地よいことしか続けられません

家を出た時から、すでに雨の匂いがする朝だった。春の気配と絡まったもったりと重い空気を振り切るように駅に向かう。

この時点で、今日は明らかに冴えてない。そう、低気圧が来ているのだ。

私のような人間は、気圧の影響をよく受ける。色々と困ったことはあるが、私にとって一番深刻な被害は「肩こり」だ。デスクワーカーとしては本当に最悪で、あんまりにもひどいもんだから隙あれば肩甲骨を動かし、グリグリと首を回しては気をそらす。

結局、限界が来たのでイヤホンを使うことにした。とはいえ、私は音楽をあまり聞かない。作業中に聞くのはもっぱら「ASMR」というジャンルである。

YouTubeで検索してもらえればわかるのだが、ASMRは360度の立体音響だ。耳かきや肩たたき、シャンプー、ヘアカット、ささやき、スライムを混ぜる音などが代表的だ。

これらを聞くと、非常に落ち着ける「音フェチ層」「声フェチ層」が一定数いるのだ。私を含め。

ちなみに私はASMRを聞くと、肩こりが緩和し安眠できるという魔法がかかる。なんとか一日を乗り切れるのは、文明の利器でおかげである。まったく感謝、感謝。

さてお風呂に入る前にTwitterを見ると、先輩が「音声コンテンツは、結局聞く人が少ないのではないか」という趣旨のツイートしていて、つい考え込んでしまった。最近、流行りのVoicyなどの様子を受けてのものだろう。

前述のとおり、私はいい音や声が好きだ。Podcastが好きだったり、音声配信「#編集したい系の僕らに」をやっているのも、その延長線上だ。

音に癒される限り、私はこれからも音声コンテンツを聞き続けるだろう。

未来は、もうインプットのフォーマットにとらわれないんだと思う。動画が好きなら動画を見ればいいし、音声が好きなら音声を聞けばいい、文字が好きならそれでいい。

同じコンテンツを好きな方法で消費すればいい。いまだって、私はYouTubeで音しか聞かないし、Kindleは読み上げ機能を使って読むのだから。

生き残るフォーマットは、それぞれを好む人の割合に近いのだ。フィルムカメラもラジオもどれだけメインストリームから外れたといっても、愛好家はいるのだから。純粋に心地よいものが、残っていくのだ。

ああ、でも。いい音声コンテンツがなくなると寂しいから、もうちょっとくらい良さが広がってくれたら、嬉しいなあ。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ