純喫茶と、現代に眠る遺産について

喫茶店が好きだ。可能であれば、お休みの日にはおいしいモーニングを出す喫茶店に行きたい。眩しくオシャレで新しいカフェは苦手だから、綺麗な白髪のおじいちゃまや、ゆっくりとソーサを運んでくれるおばあちゃまがやっているような、隠れ家のような街の喫茶店が好きだ。

ただ残念なことに、いま住んでいる家の近くには適当な店がない。大家さんに聞くと、元々は周りに沢山の喫茶店がある街だったらしいのだが、引っ越してくる前に閉まってしまったそうだ。

だからちゃんと喫茶店で過ごす経験を楽しみたいときは、少し遠出をすることが多い。今日も夕方から、読みたい本を1冊持って家を出る。

目星をつけていた1軒目は、何度来ているが入れない喫茶店。残念ながら、今日は店主さんが店じまいの準備をしていたので入るのをやめた。話を聞くと、人手が足りなくて週末しか営業できないらしい。2軒目は、穴場だなと思っていたお店。残念、こちらも今日は短縮営業だ。あと20分で閉まってしまうらしい。今度また、モーニングでも食べに来よう。

この類の喫茶店に関しては、食べログなどの情報を信じていない。だから、結局は行ってみるしかない。閉店していることも、よくあることだ。

そして、入れたのは3軒目だった。老夫婦が商店街の中でやっているその店は広く、どの席を選ぶか、ちょっと迷いつつ、端の席に腰を落ち着けた。朝以外はコーヒーを飲まないという自分ルールに従って、ミルクティーを頼む。テーブルの天板は、コーヒー豆を敷き詰めガラスを張った少し変わったものだった。

さて、今日の一冊は、ジェームズ・W・ヤングの「アイデアのつくり方」。有名作だが、実は未読なのがずっと気になっていたし、仕事の中でも企画をもっとうまく出したいな、と思い本だった。

50年以上前に書かれたものとは思えないほどに現代に通じる内容が主題だが、解説などで「最近新しく登場したテレビ広告」などについて触れられているのに何よりも、ざわざわした。

インターネットのような現代の極みの仕事をしているのが、どうにも古いものに心を惹かれている。これは浪漫なのだ。結局、私が好きな喫茶店も、昔の少女漫画も、世界史も、武道も、宗教も、そういう魅力があるのだ。なんというか特別な何か、遺跡とか遺産とかそういうものをを発掘したように、どうもこう、ざわざわするのだ。

ちなみに、次にまとめて本を読む時間をとるならば、読むのは聖書物語と決めている。この2000年、何が語り継がれて来たのだろう。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ