あんなに楽しかったのに、日本にいるとアメリカの記憶はゆるゆると過去になっていく。帰国してまだ10日程度でもこんな調子なんだから、日常って何て引力が強いんだろう……。
さて、アメリカで見た「美しい場所」というキーワードで、真っ先に浮かんでくるのがヨセミテ国立公園である。
ヨセミテは、サンフランシスコから内陸側に5時間ほどドライブしたところにある巨大な国立の自然公園。広さは東京都の1.5倍ほどで、その約90%は完全に人の手が入っていない自然。有名なのは、巨大なセコイア群と、ポストカードで見かけるトンネルビュー展望台。そして、大迫力の滝、エルキャピタンとハーフドームと呼ばれる花崗岩の絶壁。これはロッククライマーの聖地らしい。
なんとなく厳しい自然を想像していたけれど、観光する分にはひたすらに美しい! 好天にも恵まれ、青い空、白くて信じられないほど巨大な岩、豊かな草原、美しい川……。多くの人が川遊びをしたり、サイクリングをしているのだが、広すぎて全然空いてる。あまりの広さに当然園内はバス移動で、無料シャトルバスが走っていた。
私たちは実際に歩いてみたかったので、セコイアの群生林をプチハイキングできる現地ツアーを選んだ。トゥオルミグローブは、1時間ほどで気楽に歩ける森。しばらく歩くと、巨大な木が見えてくる。初めて見たけれど、セコイアって本当に巨大だ……。カメラにも映りきらない。
倒れた木の根っこは私の身長の何倍もある。中には、空洞になっていて、人が歩いて通り抜けられるものもあった。本当に通れるの?と、どきどきしながら進んだがちゃんと日本人の大人でも屈めば抜けられる。
ポストカードにもよくなっている、文字通りトンネルを抜けたところにある「トンネルビュー」という展望ポイントからはエル・キャピタンがよく見えた。これを、一人でロープなしで登ったクライマーがいるなんて信じられない。ドキュメンタリー映画『フリーソロ』の異常さが伝わってくる。
大きな岩に囲まれたヨセミテバレーを歩いていると、まるで天国にいるような気分だった。なんとか日本にあるもので例えると、スケールの大きい上高地という感じかもしれない。いいなぁ、こんなところにいい季節にいつでも来れる暮らしができたら……。
なんて、妄想するのですが……。アメリカ人の中で定期的にヨセミテにいくことができる場所に住んでいる人なんて超限られているはず。なんて言ったって、めちゃくちゃ広い国なので!
そういうことを考えると、数日あればあらゆる自然を楽しめる日本って本当にすごい素敵なところ。国土が広すぎないことも大きな魅力なんだよなあ。(とはいえ、十分広い!)