720kcalのラップサンドに思うこと

少し前、日本人女性の栄養状態を心配する記事を読んだ。

 現代の日本人女性は、低体重が目立つ。2023年の国民健康・栄養調査では、BMI(体格指数)が18・5未満の「やせ」の女性は、20代で24・4%、30代で17・9%を占める。20代女性の1日あたりの摂取カロリーは23年が1630キロ・カロリーで、終戦直後(1946年)の日本人平均1903キロ・カロリーを下回る。(引用:読売新聞オンライン

終戦直後といえば、ものすごい食糧難の時代である。それに比べてもマイナス300kcal。長年、栄養に詳しいお医者さんとも仕事をしている中で「女性が十分な栄養をとる重要性」をよく聞いているので、読んでいるだけで心配である。実際に、東京の街中には細すぎる子も多い。(もちろん当時は米中心でカロリーを摂っている時代だったので、栄養の面から言えば今の方がマシなのではないかとも思うけれど)

一方、先日滞在していたアメリカは肥満大国である。実際に、街中でも駅でもかなり大柄な人が多く、驚いた。肥満が社会問題になっている国ではどんなものを食べているのか。印象的だった出来事を振り返ってみる。

サンフランシスコからヨセミテ国立公園へ向かうツアーの途中、私と夫は郊外のスーパーでお昼ごはんとしてラップサンドを買った。チキンシーザーサラダ風ラップサンド、鶏肉とレタス、そしてマヨネーズのようなソースがかかっている。日本でもよくありそうな商品で、2切れで1,200円くらい。リーズナブルではないが、為替の影響もあるのでこんなものだろうか。

これを手に取った時、とても驚いた。重い、重たいぞ……! 文字通り、そのラップサンドには重量があった。そして、裏面をみるとカロリーもあった。2切れで720キロカロリー。なんだこれは、低カロリーを押し出す日本では見たことがない数字……! 字面だけでインパクトがある。成分表をよくみると、やはり油が多いせいな気がする。

恐る恐る食べると、おいしい。さらに日本のサンドイッチなどとは違い、端っこまで野菜も肉もギュギュッと具材が詰まっており、かなり食べ応えがある。2切れ食べるとお腹いっぱいになった。そりゃそうだ、720キロカロリーもあるんだもの。私にとっては満足のお昼ごはんだった。

そんなふうに、アメリカではベーグルでもサンドイッチでも全ての食べ物にずっしりとした物理的重量を感じた。下手に袋入りグミや日本の調子でパクパク食べていくと、次の食事が食べられないほどお腹に溜まってしまう。確かに安いのでしばらく食事が取れなさそうな時には便利なのだが、旅が進むにつれて自然と買う量が減っていった。

一方、帰国直後に成田空港のコンビニで買ったおにぎりは驚くほど軽かった。確かにふわふわだが、ある意味でスカスカとも言える。さばと青じそのおにぎりで150kcalくらいだった。2個食べても足りやしない。せっかく美味しいんだから、もっとぎゅっと握ってくれよ。そして、サンドイッチの端まで卵やレタスを入れてくれよ〜! そうやって栄養をもとめて細かく買っていくと、結局は結構な金額になる。

確かに日本では痩せが、アメリカでは肥満が問題である。しかし、この両国とも提供されている食事の「栄養」に課題があるのは共通点だと思った。

自炊ができない旅の間、自分の食べるものは外食・中食に頼ることになる。共働きが増えて、料理を作る余裕がない時もそうだ。そうなると、「そもそも街でどんな食べ物を売られているのか?」で栄養状態は大きく変わる。

そうなると買ってきた食事で十分な栄養が取れない状態なのも、余分な栄養をとってしまうのも私たちの責任だけとはいえないのではないだろうか? だったら、もっとヘルシーなものを提供する義務を食品に関わる業界に課してほしい……と私は思う。日本なら値段をあげてでももっと具材を詰めて栄養を増やしてほしいし、アメリカはカロリーや余分な油を減らすべきだろう。

ベストなのは、栄養豊富で・余分なものが入っておらず・お腹にも溜まる食事が誰にでも安価に手に入る状態である。自炊以外でも、そういう食べ方ができる世の中になってほしいなぁ。アメリカのラップサンド、具材が詰まっているのは本当によかったなぁ。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ