刑務所ものの超名作『ショーシャンクの空に』を観た。キャラクター設計、伏線、主題。個人的にどれもグッとくる作品だった。しかし、これはリアルなのだろうか?という疑問が生まれる。個人のアイテムで飾られた独房、しかも豪華な図書館を作るエピソード。
そんな疑問に寄り添ってくれたのが、サンフランシスコにある監獄島「アルカトラズ島」であった。
アルカトラズ島は、サンフランシスコ湾に浮かぶ面積約9ヘクタールの小島です。先住民族であるオローニ族の人々にとって、島は「魂の清めの場所」として恐れられていたとされ、古くから特別な意味を持つ土地でした。
19世紀中頃、カリフォルニアがアメリカ合衆国に編入されると、アルカトラズは戦略的な軍事拠点と見なされ、1850年代には要塞としての整備が始まります。アメリカ西海岸初の灯台が1854年に建設され、1859年には正式に軍事要塞として運用が開始。南北戦争時代には軍事捕虜の収容所としても使われました。
その後、1907年に軍刑務所として再編され、1934年には連邦政府によって最高レベルの警備を誇る連邦刑務所へと転用されます。収監されたのは、アル・カポネや「バードマン」ことロバート・ストラウドなど、全米でも特に危険とされた犯罪者たちです。強い潮流と冷たい海水に囲まれていたため「脱出不可能な島」として恐れられていましたが、1962年には囚人3人が海に消える有名な脱獄事件も起きました(成功の有無は不明です)。
刑務所は高コストの運営が問題視され、1963年に閉鎖されます。その後、1969年から1971年にかけて、ネイティブ・アメリカン活動家たちが「先住民の土地」としての権利を訴えて島を占拠し、公民権運動と結びついた歴史的事件となりました。
現在のアルカトラズ島は、アメリカ国立公園局が管理し、観光名所として多くの人が訪れます。要塞、刑務所、抵抗運動の舞台と、多層的な歴史が刻まれた場所として、今も人々の関心を集め続けています。(ChatGPTによる解説)
事前予約制の人気スポットだが、私の希望日程のチケットがとれたので、行ってみることにした。というのも、この5月にトランプ氏が自身のSNSにて、「アルカトラズの復活」についても語ったのだという(冗談かな、と思うけれど……)。もしかしたら、次に行く時にはもう観光地ではなくなっているかもしれない。そういうところは、ぜひ見ておきたい。
サンフランシスコ湾のピア33より、フェリーで数十分。船の上からすでに感じる塩っけの強い海風に髪型をぐちゃぐちゃにされ上陸。この時点で海の強さを感じており、建物から抜け出しても一体どうやって陸まで辿り着くと言うんだろうな。ああ、なんか軍艦島を思い出す。
上陸後はオリエンテーションを受けて、島の一番高いところにある監獄までの坂道を登っていく。途中、海鳥が子どもを作っている様子や死体置き場(実際に亡くなった人はとても少ないらしい)といった建物の外観など見どころも多い。
メインの建物では、日本語のオーディオガイドを借りることができ、その解説順に巡っていく。3層構造になっている独房、より厳しい人が閉じ込められた懲罰房、シャワー室、食堂、運動やレクリエーションをした場所、そして図書館。今は備品はほとんど置かれていないが、それぞれの解説を聞きながら回っていくと、景色が見えてくるようだった。
私が驚いたのは、 個人の房が思ったよりも自由度高く飾り付けができることだった。絵やチェス、楽器、タバコなんて置いてある。ある程度、自由である方が更生を促せるという考え方はこんなに早くからあったのか。なんて、考えていくとそもそも刑務所への疑問が尽きない。そもそも受刑者が終身刑の場合と社会復帰が前提となっている場合ではやることが違うだろうし、刑務所の運営と設計でかなり難しい仕事だろうな……。日本の刑務所ってこんなに自由なのだろうか?
もう一つは、図書室。こちらも1万5000冊の蔵書があり、哲学や心理学などの本を受刑者は借りられたそうだ。高いところに窓があり、光が入ってくる。本にはよくないかもしれないが、個人的には気持ちがいいところに図書室があるなぁと思い、少し休憩をしていた。
他にも、広い廊下を「ブロードウェイ」、時計があるところを「タイムズスクエア」と呼んでいたエピソードや、ボードゲームを改良して一人でできるようにしたものが流行った話など。じっくり見ていると、あっという間だった。
今、日本はどうなっているんだろう。なんにも知らないなぁ。アルカトラズを通して、こうやって刑務所制度について考える機会になったのは良かったのかもしれない。現代的な刑務所だと、ノルウェーの『世界一豪華な刑務所の内側』(ドキュメンタリー)、映画『プリズン・サークル』に出てくる島根県浜田市にある「島根あさひ社会復帰促進センター」という刑務所などが思い浮かぶ。今年こそ、矯正展に行ってみたい。
ちなみにアルカトラズを訪ねる前に、現代のアルカトラズを舞台にテロをするアクション映画『ザ・ロック』を観た。これはシンプルに娯楽としていい作品だったので、行く人にはぜひ勧めたい。