先日、神奈川県にある塔ノ岳に登ってきた。高さは1500mにいかないほどで、いわゆる表丹沢と言われる中では最も人気の山らしい。朝9時ごろから登りはじめめて「バカ尾根」なんていうなかなか不名誉な名前がついた尾根沿いの階段をずーっと登っていくと、昼過ぎには山頂だ。
圧倒。関東平野の東京のビル群から房総半島、三浦半島、伊豆大島、富士山、そして南アルプスの雪をかぶった山までがぐるーっと見える。この高さの山に登るだけで、ここまでの景色が見えるとは思っていなかったので、途中で振り返ったときに驚いた。これはリアルな関東の地図だ。
私達は当たり前のように住んでいる平野がいかに広いこと、こういう山から水が流れ混んでいること、そして海へとつながっていること。山には霜柱がいっぱいあって、ゆっくりと硬い雪が積もり、水を蓄えているのを感じた。
そして、山をおりるときにはちょっとした雪が降っていたが、関東平野にはさんさんと太陽が差し込んでいる。ちなみに頂上の気温はマイナス5度。今年一番の寒さだったが、登山グッズの防寒力・防水力はなんと心強いことだろうか。人類の英知もありがたい……。そして、平野って住みやすそう。
これまでで一番、まちの暮らしと自然がつながっていることを密接に感じた登山。シンプルに、もしここに一人でほうりだされたら遭難しそうだ。一人の人間のちっぽけで、弱くて、儚い。だから、助け合う。
以前、YAMAPの春山社長に話を聞いたときにも、丹沢を勧められた。流域という単位で見ると、関東は丹沢からつながっているらしい。まさに、私も感じた地図の感覚だ。登山をしたうえでこの記事を読み返すと、また一つひとつの言葉が自分と繋がっていく感じがする。
ネイティブと言うと“観察対象”のように思われがちですが、そうではない。
自分たち自身もネイティブととらえ、私は、私たちはどう生きるか。その問いを持つことが大切なんだと気づきました。
東京に住んでようが福岡に住んでいようが、足元を掘り、「ここが自分の生きている地域であり、故郷であり、ネイティブなんだ」と考えれば、生きることにもっと真摯になれて、より良い仕事ができると思います。
私自身も自然の一部、雪のしんしんと降る山を見ながら、この言葉は私の中に染み込んできた。私はどう生きていきたいんだろう?
都会に住みながら、自然と調和していくってどういう暮らし方なんだろう? 最近、漢方や薬膳の勉強をしているが、そこでも自然との調和は目標として登場してハッとした。
もともと旬のものを食べたり、自然の中で過ごしたりすることはきっと「ていねいな暮らし」や「贅沢品」ではなく、ものすごく大きくて当たり前の流れに乗ることだったはずだ。それが難しい日常を過ごしているならば、もしかしたらちょっと頑張り過ぎなのかもしれない。
ちなみに、登山後の2日ほどはなかなかの筋肉痛に襲われた。うーん、自然の中で心身を鍛え続けたいものですね。