何事もまずは身体感覚を先に

青山にある岡本太郎記念館を訪問した。意外と渋谷からも近いところあるのに、行ったことがなかった。(渋谷は来る機会は多いのに行くべきところも多い、魅力的な街である)

この記念館は、実際に岡本太郎氏が1950年代から作業をしていた場所。記念館になったあとは筆からカンバス、本棚まであらゆるところがそのまま再現され、なんと本人がシリコンで型をとって作ったという等身大の人形まで飾られている。

庭には、さまざまな作品の模型や本物が置かれ、さながらジャングル状態。とはいえ、もともとお金がない時に作った自宅というのもあって、決して広くはない。しかし、かなり濃密に岡本太郎氏を感じられる、パワーのある場所である。

私もすっかり圧倒されてしまい、思わずミュージアムショップに並んでいた、岡本氏の名著『自分の中に毒をもて』を10年以上ぶりに手に取ってしまった。言葉の力にも打ちのめされつつも、自分の中にリミットを作らない岡本氏の言葉にぐんぐんエネルギーをもらった。

私がこの本を前回読んだのは、大学生の時である。確か、読んでおくといいよ、というアドバイスを誰かにもらって読んだのだが、あまり内容を覚えていなかった。

それもそのはず、当時の私は名古屋に住んでいて東京にも大阪にも用事があるときに来るだけだったのだ。つまり、過去の私は岡本太郎氏とその作品になんの思い入れもなかった。

でも、今は岡本太郎作品の鑑賞体験がある。数年前に訪問した太陽の塔(もちろん内部まで!)に心をがっと掴まれ(その時は万博にハマってしまい、関連本を読みまくった)、渋谷や青山に当たり前のように鎮座する絵画や彫刻を見ながら東京生活を謳歌してきた。そう、先に岡本太郎氏の作品を味わったからこそ、アトリエも書籍も面白くてたまらないのだ。

まずは体験してみて面白さを身体で感じること。その後、情報は頭に入れること。この順番が大切なのだと思う。体験のあとのインプットはより深く作品を味わうことにも、深く理解することにもつながると感じている。体験は貴重だ。もっと、心を揺さぶる体験をしに積極的にいろいろな場所へ向かいたい。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ