裏面に広がる情報、そして自己決定

会社帰りに、いつも八百屋へ立ち寄る。何気なく手に取っていく定番の食材たち。季節の野菜を値踏みしつつ、レジに向かうと、思いがけず店員さんに話しかけられた。

「これ、能登の地震で工場が止まっちゃって、やっと復活した商品なんです。応援してあげてください」

彼女が手に持っていたのは、「おだしのしみたきざみあげ」だった。これは、油揚げに甘辛い味付けがされていて、和物にも汁物にも使える乾物である。180日も常温保存が可能で、私の家には必ず常備されている名品だ。

なんてこった、これが石川県で作られていることすら私は知らなかった。確かに裏面には、住所がしっかりと刻まれている。美味しいからこそ、全国から応援の声が集まり、急いで復旧させたらしい。知らないうちに、私の暮らしにも地震の影響が及んでいたのだ。店員さんにお礼と、「絶対、また買います」という言葉を告げ、家に帰った。

思えば、乾物入れや冷蔵庫にある食品の裏面を、普段どれだけ読んでいるんだろう。意外にも、ベトナム産だったり、思いがけない材料が入っている食品も多い。私たちの食事はもう大きなネットワークから切っても切り離せないし、商品パッケージの裏には、こんな宇宙が広がっている。

もしスーパーで2つの商品のどちらを買うか迷ったら、値段ではなく、裏面を見て決めてもいいのかもしれない。好きな土地で作られているとか、自分なりの基準を考えるヒントがそこにある。そうやって、自分の基準で選んだもので、冷蔵庫をキッチンを、自分の身体を作ることができるほうが、ヘルシーなのではないか。

能登半島、どうか早く復興が進みますように。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ