本を読むきっかけなんて、なんでもいい

私の大好きなタカラジェンヌのひとりは、北海道旭川市出身である。北国だ、行ったことはない。ということで、旭川市を舞台にした三浦綾子さんの小説『氷点』を読むことにした。大ベストセラーだと知っていたが、今読んでもあまりにも面白く、一気に世界に引き込まれてしまった。

(注釈:この記事を書いている時点で、続氷点は読んでいません。読みたい)

■作品概要

ある夏、北海道旭川市郊外の見本林で三歳の女児が殺される。父親、辻口病院院長の啓造は出張中、母親の夏枝は眼科医の村井の訪問を受けている最中の出来事だった。夏枝と村井の仲に疑いを抱いた啓造は、妻を苦しめたいがために、自殺した犯人の娘を引き取ることにする。事実を知らない夏枝はその娘に陽子と名付け、失った娘の代わりに可愛がる。夏枝や兄の徹らの愛情に包まれて明るく素直な娘に成長していく陽子。だが、陽子が辻口家に引き取られてから七年後、夏枝は夫の書きかけの手紙を読み、事実を知ってしまうのだった。

三浦光世. 小学館電子全集 特別限定無料版 『三浦光世 電子選集 三浦綾子創作秘話』 (Japanese Edition) (p.5). Kindle 版.

設定の時点で面白い……が、心の機微が丁寧に描かれており、人間関係がどうなるのか、ハラハラドキドキする。当時は、何度もドラマ化されたらしい。これは朝日新聞の懸賞小説がきっかけで1年がかりで書いた作品で、三浦綾子さんはその頃は雑貨店を経営しながら、夜10時から書いていたらしい。今とも違うこの時代に、女性小説家が食べていくのがいかに大変なことか。

こういう背景も知りつつ、作品を読むと一層面白い。三浦綾子さんの作品は、高校の授業で『塩狩峠』を読む宿題以来であった。当時の私は心の状態が悪く、あまり本を読めなかったので記憶がない。どんな理由であれ、こんな素晴らしい作家さんの本にまた出会えてうれしい。

改めて、本を読むきっかけなんて、なんでもいい。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ