循環する弱さ

子どもの頃に影響を受けた本というのは、誰しもあるだろう。中学生以降はライトノベルを読む機会が増えたが、それ以前はもう少し児童書らしいものを中心に、作家単位で読み漁っていた。

はやみねかおる、松原秀行、森絵都、重松清、名木田恵子、あさのあつこ、灰谷健次郎……(敬称略)。あとは海外文学も好きで、作家単位だとジャクリーン・ウィルソンとメグ・キャボット。あとは純粋に大草原シリーズやハリー・ポッターシリーズなどは淡々と読破していた。

この作者群の中には、一定数、社会的に弱い立場の子どもを題材にした作品を書いた大人たちがいる。特に好きだったのは教育カウンセラーでもあった、青木和雄さんの本だ。

代表作には、ハートボイス、ハッピーバーステー、ハードルという3つの作品があり、それぞれが異なる立場に置かれた少年少女たちの葛藤と成長を描いており、さらに大人が抱える複雑な事情も描写した。まさに小学校の校長まで務めたからこそ書ける、リアルで温かく骨太な作品であった。

たまたま思い出す機会があり、加筆修正された『ハッピーバースデー』を読んでみた。加筆部分は、主人公・あすかが心を痛める原因となった母親・静代の仕事関連のエピソードである。これは、大人からのリクエストが非常に多い部分だったらしい。

静代は子どもの頃から姉・春野が病弱だったことから両親の愛を十分に受けられないまま育ち、家の中では夫に下女のように扱われている。大人になって読み直してみると、さらに職場でも「今時、こんなものいいはされないだろ」と思うほどのひどい目にあっていた。おいおいおい。

そして、そこで受けた傷をすでに鬼籍に入ってしまった春野によく似た娘であるあすかににぶつけていたという……。今読み直しても衝撃的だった。誰かが誰にぶつけた弱さというのはぐるぐる循環し、さらに弱い人にぶつけられる。

この作品の魅力はやはり、子どもの強さである。しかし当然だが、大人もどんなタイミングからでも成長して、変わっていかないといけない。ただ、大人になったから強くなることなんて、ない。内面の成長には個人差があり、積み重ねていくしかない。

大変なときもあるけれど、魅力的で豊かな人間になるというのは自分の内面を磨くことだし、それは大人になっても続けないといけなしい、子どもを含めあらゆるところに学ぶ機会はあるのだ。改めて、心の修行という言葉を思い至る。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ