ある行動に至るサイクルを理解する

諸事情で、不妊治療に関する情報をひたすら集めたり、勉強している時期があった。そこで結構話題になるのは、「夫に当事者意識がない」ということである。例えば、全然勉強をしてくれなかったり、タイミングをとるのを嫌がったり……etc. 興味深いのは、どのケースでもかなり似たようなところで、つまづきがあることである。これはなぜなのか。

これは聞いた話だけれど、やはり男性目線だと不妊治療の現場である婦人科というのは、かなり居心地が悪い場所らしい。なんとなくピンクっぽい、女性の患者ばかりで自分が座っていいのかもわからない、女性の身体についての解説を聞いても生理の仕組みから怪しかったりすると全然情報が頭に入ってこない……など。結果として、こんなふうに仕事を休んでまで検診に行く意味はないのではなどと言いはじめ、足が遠のく。

一方、不妊治療の現場は女性の心身にかなりの負担をかける。採血や内診といった想像しやすいものだけではなく、卵管通水検査などかなりの痛みを伴う検査も多く、そういった情報はネットにたくさん載っている。そうすると女性は心と体の準備のために、かなり深く情報を調べ、当然詳しくなる。

不妊治療の現場において、男女は全く別のサイクルがおきる環境にいる。男性側は足が遠のきやすいサイクル、女性側はひたすら勉強をして情報収集をしたくなるサイクル。そうすると、男女間の知識格差はいつのまにかがツンと開き、女性側からすると「夫(男性パートナー)は全然協力してくれない」になり、男性側は「妻がピリピリしていて怖い」という状況になる。

私は、人の行動は環境によって決定される部分がかなり大きいと考えている。だからこそ相手の人間性の良し悪しではなく、なぜそういう行動に至るのか?の仕組み・サイクル・環境部分に注目することで、互いの温度感の差に対して理解しやすくなるのではないか。そんなふうに仕組みの理解は大事だな、と感じたのであった。

しかし、理解するところまではいいのだが……。整理していくと、そんな「勉強しない男性」のケアを、「心身ともに大きな負担を強いられる女性」にさせるのは酷ではないか。さすがに辛すぎる。

医者にこっそりと「夫に協力するように言ってください!」と言う方法もあるらしいが、それはそれで手間なわけで。大人なんだから、自分で考えろ!と言いたくなる気持ちもわかる。

それに加えて、センシティブなテーマだからこそ男性自身が気楽に相談をする相手もなかなか見つからない。男性同士で不妊治療の話をするのって難しそうだな……と勝手に想像してしまった。そうなると、やはり外部の専門家などの力を借りるほうがよいのかもしれない。しかし、それって誰なんだろうか。不妊治療が夫婦関係に深刻な影響をもたらす理由、奥深い……。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ