映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』を、日本初のユニバーサル・シアターである「シネマ・チュプキ タバタ」へ鑑賞しにいきました。初めて行ったのですが、すぐ近くにかわいい盲導犬がずーっとおとなしく座っていて、こういうことか!とドキドキしました。かわいい……。
恋人とのデートがきっかけで初めて美術館を訪れた全盲の白鳥建二さん。その日、作品を前に語られる言葉を聞きながら「全盲でもアートを見ることはできるのかもしれない」と思うようになった。そして自らあちこちの美術館の門を叩いた白鳥さんは、いつの間にか「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の鑑賞法を編み出した。それは、期せずして、目の見えるひとにとっても驚きと戸惑い、そして喜びを伴う体験であった。
本作は、そんな「全盲の美術鑑賞者」の20年を振り返り、その友人たち、美術館で働く人々、新たに白鳥さんと出会った人々を追い、彼らが紡ぎ出す豊かな会話を追ったドキュメンタリーである。
映画『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』公式サイト
私自身、昨年から芸術祭にはまっていたこともあり、もとになった書籍を読んだのがきっかけでした。本では水戸芸術館が素敵だと知って、ちょうど今月遊びに行ってきたばかり。だから、水戸の街でたくさんロケをされているのがわかり、お〜!となりながら映像を見ていました。
それこそ、本に書かれたことばだけで想像していたものが映像で表現されていて。まさに立体化した感じ。さらに、最後の舞台挨拶では、白鳥さんがサプライズ登場! 客電が落とされた真っ暗な中で、白杖で歩いていて舞台に向かっているのを見て、「そうか、光が関係ないとはこういうことなのか」とリアルに納得。
そして、ご本人は映画の中と同じ、肩の力が抜けた、とても素敵な方でした。先月は、初海外として、映画に登場するマイティーさんが住むオランダ・アムステルダムに行ってきたらしい。
私が映画の中でもっとも印象的だったのは、最後に「幸福とは何か?」という対する答えでした。白鳥さんは、「幸せは時間の中にある、コミュニケーション。だから、とどめておけない(抄訳)」と話す。
私みたいなタイプは、アートや博物館からとにかく何かを学び取ろうとしてしまう。もちろん、それが私にとって良いんだけど、だからどちらかというと一人でゆっくりと回りたいと思ってしまう。
でも、コミュニケーションそのものが楽しいとしたら。しかも、その楽しさっていうのはいわゆるわかりやすく与えられた「興奮する」とか「ドキドキする」みたいな「楽しさ」ではなくて、何かこう普段は話さないようなお互いの心とか思っていることが出てくることによる面白さなのかもしれない。感情的な喜び、というか。
このコミュニケーション自体が楽しみであるという感覚、抜け落ちていたなと思う。ただただ、そこにいてコミュニケーションをすることが楽しい。仕事もパートナーシップも、そういうスタンスで日々を過ごしていたら、どこに行っても、行かなくても、その一瞬が幸福に変わる。この姿勢が、「白鳥さんとアートを見に行くのが楽しい」と言われる根源なのかもしれない。
これから先は白鳥さん自身も、鑑賞会を開いていく予定とのこと。だれかと対話したい気持ちはあるのに、なかなかうまく見つけられない私としては、ぜひ一度、行ってみたい。