「唯一無二の文化」というプライド

宝塚歌劇団ファンとしては、同劇団の110年近い歴史に対して、心から敬意を払いたい。ただ、いろいろな議論を見ていると、やっぱり長く続く中で時代に合わせ続けるのって本当に難しいんだな、とも思う。

メディアもスペースも、続けるのを前提に作られてものが多い。私は新しく物事を始めるよりも、長く続いてきたものを改革していくほうが難しいと思っている。長く続いているものがすごいのは、この周りの変化の中で上手に立ち回ってきたことである。

何かを始めるときには勢いがある、理由がある、社会背景もあっている。しかし、続けていくその状況はすべて変わる。関わるメンバーが変わり、流行りが変わる。新しいプレイヤーが次々に現れる中で、なぜ始めたのかは理由を失い、続ける理由をひねり出すことになる。

これって、結構しんどい。なんで続けるのか、他人が始めたものをなんで、なんで、なんで。それでも、自分のエネルギーを使って、他人が始めた活動を続けていくためには、「これはここにしかない文化だ」と思えるくらいの尖りと思い入れ、そしてが必要だと思う。

クリスチャン・ディオールの急逝後、まだ21歳のイヴ・サンローランが引き継ぎをし、次のデザイナーたちへどんどんバトンを渡していくことになる。これが引き継げたのは、「ディオール」が唯一無二の存在だ、と思っていたからなのではないだろうか。

自分たちのやっていることが、誰でもできることだったら、何も続ける意味はない。でも、同じものは他にない。そのプライドがあるからこそ、人の力を集めて頑張ることができる。やっぱり、ブランドってすごい。なんと、松竹という一つの会社だけによって運営されている伝統文化・歌舞伎もきっと止まれなくて、続いているのではないか。

次の世代まで続くものを作るには、唯一無二の文化だと内外的に思えるものを作る必要がある。だからこそ、長く続くものはすごい。唯一無二でないと、他人の人生をかけてなんてもらえないんだから。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ