ディオール展というアトラクションへ

幸運なことに、東京現代美術館で開催中の「ディオール展」のチケットが取れたので、行ってきた。SNSを見る限り、当日券の奪い合いは日々加熱し、開館前に売り切れることも増えているようだ。恐ろしい展示会である。というか、東京の人口の多さにびっくりする。

本展は16個のエリアに分かれ、クリスチャン・ディールというブランドがたどってきた道のりをその思想とともにたどることができる。世界各地で行われている巡回展なのだが、地域にあわせた展示方法やエリアがあるらしく、日本とディールの深い関わりについても垣間見える。(とはいえ、最後のエリアではディオールがいかに、様々なエリアと連携した商品づくりをしているのかが見えたので、日本も重要視されているがその一つなんだろう)

日本での展示は竹ひごや鏡、天井からの吊り下げの花……など、それぞれのエリアごとに全く異なり、エリアをまたぐたびに息を飲んだ。ずっと、ずっと、一流の美しさが続く展示。

正直なところ、私はあまりファッションに興味がある方ではなく、実用性のない服になんの意味があるんだろう?と思ってしまうタイプ。元も子もない。しかし、そんな私でも「ドレスという芸術」に全力で挑むラグジュアリーブランドには圧倒され、初めて服を見て「これはアートなんだ」「ドレスには感情があるかもしれない」と感じることができる場所だった。シンプルにすごい。

見るものが多く、私のようなスローな鑑賞者は出口にたどり着くまでに、なんと3時間半近くがかかった。正直、書きたいことはつきない。あえて絞るならば、なぜディオール展がここまで人気なのか、考えてみた。撮影・SNS投稿OKで、ここまで凝った展示。チケットも他の展示より高く、会場は清澄白河駅からさらに15分ほど歩く遠い場所だ。それでも大人気である。

私の仮説だが、ディオール展はいわゆる従来の「美術館」や「美術展」ではなく、ディオールというブランドが作る、期間限定テーマパークのアトラクションのように捉えられているのではないだろうか。

テーマパークは、入った人を圧倒的な世界観に導き、そこでマックス楽しい体験を提供しようとする。ディオール展も「女性を称え、花と庭園への愛を賛美し、芸術と歴史と文化を称揚するファッション」というブランドの根底にあるテーマだけをとにかく伝えるために作られており、服単体ではなくその世界観を見せるための展示方法にかなりのこだわりを見せていた。

さらに、そういった圧倒的な美しさがまとまった写真がSNSにあふれかえっている。しかも、期間限定。行かなきゃ、行きたいなと思わせる。

そして、もう一つテーマパークに重要なのが、理解度がバラバラでも楽めることだ。ディズニーファンはより深く、そうじゃなくてもただただ行けば楽しめる……。これと同様に、ディオール展は誰と行っても楽しめる気楽にも見られる展示になっていた。

常に「知りたい!」という欲求を埋めるために動いている私としては展示内容に対して解説が少なすぎる……と思ったけれど、それでも満足できる圧巻のアトラクションであった。ドレスがたくさんあるって、それだけですごいインパクトなのに、展示方法まで凝るとさらにすごすぎるね。あと、美しいものを想像もしない物量と勢いでぶつけてくるところは、宝塚歌劇に似ているな、と思う。実際、舞台衣装なのか?みたいなドレスもたくさんあったので……。

まだまだ考えたりない気がしているので、例にもれず私もミーハーにたくさん写真を撮ったので、また見なおしながらもうちょっと考えたい。誰にでも自信をもって進められる展示です。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ