スパイは影のヒーローなのか?

映画『007 カジノ・ロワイヤル』(2006年)を観た。もちろん、宙組をより深く楽しむためである。結論、キャラクターの名前とカジノに行くところ以外、ほとんど共通点はなかった。ファン向けの話になってしまうが、イルカもキャベツ畑も、ラスプーチン、キャベツ畑、パラシュート……いずれも出てこなかった。劇場で、私は何を見せられていたんだろうか。

しかし、意外と知らない名作を見るというのはいいものである。こういうきっかけがあってこそ、MI6やCIAが何なのか、ジェームズ・ボンドがどういう人なのかがわかってきた。世界中でロケをしている様子もかっこいい。

しかし、スパイものを一体どういう心持ちで見ればいいのか、迷っている。宙組版007には、「スパイは影のヒーロー」という趣旨の歌があり、フランスやアメリカ、そしてイギリスの諜報部員たちが自分たちの仕事への誇りを歌い上げる。確かに、舞台作品でキャラクターを魅力的に立たせるにはそれでいいのかもしれない。

しかし、MI6もCIAも実在する組織である。さらに実際にどういう活動をしているのかは一般人にはよくわからない。殺しをしたり、戦争をしたり。だとしたら、「MI6はヒーロー」と解釈するのにはかなり抵抗がある。つまり、実際の組織名を出している時点で非常にプロパガンダっぽいなと思ってしまう。

中国には、「児童軍事文学」というジャンルがあると聞く。実際に使う軍事用語を交えつつ、展開されるストーリーの子ども向け小説で、愛国心や英雄主義を育む効果があり、中国政府も推奨しているらしい。強いものがたりは、政治に利用されることもある。

私はまだ1作しか007を観ていないけれど、きっとMI6に好印象を抱く人も多いんだろうなぁと思った。これだけ有名でメジャーな映画だから楽しんでいきたいけれど、自分の政治思想にも影響を与えちゃうかも……くらいは少し警戒しておきたい。慎重な鑑賞者であろう。ということで、今から、スパイに関する本を1冊読みます。(もちろん、SPI×FAMILYではない)

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ