目の前にいる相手をリスペクトする

花組さん、『うたかたの恋』『ENCHANTEMENT -華麗なる香水-』の大千穐楽、おめでとうございました! 何かと感染症で大きな影響を受けてきた花組さん。東京公演の完走はなんと1年半ぶり。次はぜひ、東西で!

5年前に初めて観た宝塚歌劇が『ポーの一族』だったので、個人的にも思い入れのある花組さん……。当時の主要メンバーは組長からトップコンビ、3番手までは完全に入れ替わっていて、とうとう水美さんまで専科へ。この5年で柚香さんは何人とお別れをしてきたんだろう。

最後の、退団者紹介のところ、柚香さんはどんなに下級生も「素晴らしい方」「●●さん」と呼んで接する。上級生になると、「いい子」とか言ってしまいそうだけど、相手を立てるって姿勢がすごく好感が持てた。そうなんだよね、年齢じゃなくて目の前にいる相手を見るのだよ。

個人的にはハプスブルク家について、ある程度まとめて学べたという意味でもよかったこの公演。メモメモ。

・私は1999年月組版を観てから行ったけど、一度映像を見るとポイントがわかっていい。たくさん場面も要素も足されているイメージで、2023年版はさすがにスピード感があるかも。それでも他の近年の作品に比べるとゆっくりに感じるので、昔の作品がいかにゆったりしていことか。
・「ルドルフとマリー以外の存在感が薄すぎる」という問題が解決された、大正解な脚色。特に、フランツ・フェルディナントはかなり大役に。
・娘役は、ソフィー・ホテップやミッツィ・カスパール、ミリー、そしてフランツ・ヨーゼフを支えた2人の女性がまたよい。
・資料として『「うたかたの恋」の真実』(青灯社)という書籍が早めに提示されたのもよかった。主な宝塚ファンは全員、ハプスブルク家の基礎知識はあると思うけれど、描かれていなかったことがよくイメージできたし、脚本の補足になっているのを感じた。
・ルドルフは難しい。魅力的な人物だったらしいが、描かれている部分はダメ男すぎて。でも、補足とか生い立ちが理解できると見え方が変わるのかな。中身に関しては完全にダメダメなのに、柚香さんくらい素敵な方ならいいか!となってしまう、身体美はさすが。
・マリー・ヴェッツェラというキャラクターは息を吹き込むのが難しい。今年1回目の観劇は、何を考えているのかが全然わからなくて、ひたすら明るい感じに見えたけど、彼女の内面を表現する表情を見逃していた気もする。2回目はかなり伝わってきた。繊細な芝居をしている。
・フランツ・ヨーゼフという人間に、はじめて強く興味をもった。頭が硬いけれど、この人なりのルールがあって動いているのを感じる。そして、この人を支えるために立場の違う2人の女性が必要だったのも理解できる。ひとりの人間だけで、誰か重圧を背負う人を支えるのはかなり難しいのかも。

……と書き出せば、キリがない。ショーの方は、虞美人のシーンが好きだった。今の花組で中華ものも見たいなあ。改めて、花組さん大千穐楽&完走、おめでとうございます! 花組、最高〜〜!

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ