映画『風と共に去りぬ』をやっと観た!キャラクターの魅力が深すぎる

映画版『風と共に去りぬ』(1939年制作)が図書館にあり、借りて観てみました。

舞台版も深く楽しむためにやっとやっと観ました。

※この記事には作品のネタバレを含まれます。未視聴の方はご注意下さい。

過去に、宝塚歌劇による舞台版(2013年宙組・2014年星組)と、翻訳者・鴻巣友季子さん出演の解説番組『100分de名著』を観ていたので、大まかなあらすじは分かっていたものの、映画版は初めて。

宝塚歌劇をはじめミュージカルを深く理解するためには、できる限り原作に近づかないといけないと感じる。なぜなら、さらっと流れていく歌の中にめちゃくちゃ重要なことが入っていることがあるので……。

しかし、とっつきにくかった理由は長さ! なんと232分。こんなに長い映画はボリウッド映画か、園子温監督の『愛のむきだし』(237分)くらいしか観たことがありません。

しかし! いざ観始めるとDVDのA面・B面のディスクを急いでひっくり返して、夢中になってしまいました。

もちろん同作品は、「奴隷制度」や「南北戦争以前の南部賛美」の描き方など、現代人が持つべきリテラシーの面を見れば課題があります。この差別問題にはいくつも解説記事があるので、今から観る方はそれらを読んだ上で観るほうがいいでしょう。

さすが映画史の残る名作。「古き良き南部」にノスタルジーを感じないアメリカの伝統と直接関係がない人間にも、があるのを強く感じました。

どの部分に魅力を感じたのか、心情を整理していきます。

1. どんな状況でも道を切り開く主人公・スカーレットの「たくましさ」

魅力的な物語には、魅力的なキャラクターが必要です。まさにスカーレットはその典型。

まず小気味いいほどに強い……。手段を選ばず(妹・スエレンの恋人を奪う、税金を払うためにバトラーを騙そうとする)、目的を達することができる。どんな状況になっても、アシュレーを愛し続ける。そして、とても頭が良く、自分の心に素直。また、南北戦争で建設ラッシュを迎えたアトランタで製材業を営み、成功するだけの商才もある。

もちろん落ち込んだり、罪悪感を感じたり、絶望したり、葛藤する場面も多々あるのですが。けれど、彼女はお金とタラの土を握りしめたら正気に戻る。レット・バトラーが去っていくというなつらい場面でも、「明日考えよう」とつぶやいて前に進む。

同時に、彼女は母親を心から尊敬し、戦争で傷ついた人々をつらがりながらも看病し、両親の死後には使用人やメラニーたちをまさにその腕一本で支えている。

激しい気性、それは生き抜くために必要な強さ。この部分がすごく人間らしいし、なんだろう……強くないと生きていけないと思う瞬間を味わったことがあれば、「わかる」と思う気がします。

ちなみに、タカラヅカ版ではスカーレットを2人の役者が演じますよね。1人は主人公としてのスカーレット(ちなみにトップスターor2番手クラスの男役が担うことが多い)。そして、もう1人がスカーレットの内面の心を素直に吐露するスカーレットⅡ。

初めてこの演出を観たときは面食らったのですが、今はスカーレットを表現する見事な演出だと思うようになりました。

2. メラニーの「優しさ」と「意志の強さ」

タカラヅカ版ともっとも印象が違ったのはメラニーでした。正直、どれくらい重要なキャラクターなのか分かっていなかったな……と思うほど。

作品冒頭でスカーレットの想い人であるアシュレーと婚約し、南北戦争の戦禍の中で子供を産み、さらに身体も弱い。しかし、負傷者の看病に精を出し、スカーレットにもどこまでも優しい。特に貴族階級でありながら、娼館で働くベル・ワットリングへも差別感情を持たずに付き合う。

しかし、タラの館で強盗に来た男をスカーレットが撃ち殺した後に、もっとも冷静だったのはメラニー。そして、アシュレーらが貧民窟を襲った事件の後もすらりと嘘をつく……。

タカラヅカ版ではただ優しい存在、スカーレットと対極の存在である「天使」のようなキャラクターだと思っていました。しかし、それ以上。彼女ほどスカーレットに影響を与えた人間もいませんし、作品を観ていくほどに印象が変わっていきました。

最後、彼女が死ぬ場面でのスカーレットへ伝えた言葉と言ったら……。そして、自分の大切にする人をただただひたすら信じ、愛する彼女の生き方はすごく好きだなと思ったのでした。タカラヅカ版ではこちらをトップ娘役クラスが演じるのもよく分かりました。

あと、アシュレーはタカラヅカ版以上に頼りないね……。スカーレットとは合わなさすぎる。その点、本当にみつるさん(華形ひかるさん)はアシュレーを線の細さのシルエットもふくめて、非常にうまく演じていたのだなと思いました。

3. レット・バトラーの「かっこよさ」

もちろん、タカラヅカ版ではレット・バトラーがもっともかっこよいポジションで描かれます。そして、映画版も同様。

いつも冷静な大人の男。南北戦争も冷静に見つめている割に、負けかけた戦争で南部の兵として志願する。独身主義と言いつつ、いざ娘ができると驚くほどに子煩悩な父親になる……。(気持ちにもお金にも)余裕があり、ずっとスカーレットのことを愛しつづける信じられないような忍耐力も持ち合わせている。

この人にも両面性があり、そこが人間らしい魅力に。現代でモテるかどうかは知りませんが、古き良き浪漫あふれる男性だと感じました。

あと字幕版で観終わった後に、日本語吹き替え版もちょっと観たのですが……、大塚明夫さん演じるレット・バトラーって最高にかっこいいですね……。

共感を引きおこす「人間の二面性」

『カラマーゾフの兄弟』がいかに名作化を語る言葉の中に「人生で人がもつすべての感情を味わうことができる」という表現を読んだことがあります。

『風と共に去りぬ』にもそれに近いのかもしれません。誰もが自分の中にもつ、上品で善良な面と、素直だけど世俗的な面。この作品のなかでは、さまざまな人物の変化を通して、そのどちらにも共感を生んでいるように思います。

考えてみると100分de名著を先に観たのが良かったようにも思います。同じく長いから……という理由で手が出せていない小説版や他の鴻巣さんの解説本も読みたくなりました。もっと深く理解できるようになるんだろうなぁ。

以上、映画を観た直後に、さっと書いてみました。あとから読み直すかもしれませんが……。それではでは。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ