美容室の注文と編集は似ている

ショートヘアなので、定期的に美容院へ行く。人生の中で、数え切れないくらいに髪を切ってもらっているはずなのに、正直、毎回うまくいっている感覚がない。最終的には、できるだけなんとかしてもらうが、なんでだろう。

まず、ゴールイメージを伝えるのが難しい。ヘアカタログはどれもこれも、スタイリングが完璧で、切った直後のイメージが沸かない。しかも、こんなに上手にスタイリングができる気もしない。なので、雑誌を見ても「ん〜……、えーと、多分、こっちのほうが? 近い……ような?」のような曖昧すぎるやり取りになる。

次に、イメージがあったとしても、髪質や頭の形、髪の生え方によって、できるスタイルとできないスタイルがある。「こういうのにしたいんですよね!」と伝えても、美容師さんを困らせる。

指示に使う言葉も専門的すぎる。「段をつくる」「前下がり」「オン眉」などなど。一般人はどこでこんな言葉を習うんだろう。ファッション雑誌ですらちゃんと見たことがない。どうやってイメージに近い言葉で指示を出すんだろう。美容師さんから、「つまり、前下がりってことですね!」と言われても、合っているのかわからない。

途中で、「ん、ちょっと違うな?」と思っても、その部分をうまく修正してもらう方法がわからないし、それは髪質や髪型全体のバランスを考えた専門的な気遣いかもしれないので、戸惑ってしまう。最後に、このやりとりは数ヶ月に1回しかしないので、すぐに指示の内容を忘れてしまう。

だいたいこんなところだろうか。一歩引いてみると、仕事ができない編集者みたいな悩みである。ゴールイメージが描けない、実現可能性が低い案だったりする、クリエイターが作れても予算などの制約が難しい、業界用語をわかっていない、依頼者と作業者のコミュニケーションがうまくはかれない……など。

美容室での注文は、編集に似ている。美容院ではお客さんは発注者であり、編集者だ。つまり、そこそこのディレクションスキルを求められているのである。だから、毎回同じ美容院に行く……という行動パターンがあるんだな。ちょっとずつ、お客さんとしても進化していきたいものである。

でも、こういうときこそAIに助けてほしい気持ちもある。たとえば、今の写真と毛髪を渡して、「あなたならこの髪型ができますよ!」みたいなのを3パターンくらい示してくれないものだろうか? そうしたら、かなりイメージがしやすくなるわけで……。美容室×AI業界を担う誰か、お願いします。

有限会社ノオト所属の編集者・ライター/ コワーキングスペース「Contentz」管理人。 テーマは働き方・学び方・メディア・朝ごはん など / 休日は喫茶店と東京宝塚劇場をうろうろ