人生の大先輩に食事に連れて行ってもらう機会があった。会場はすごく美味しい鉄板焼きのお店で、落ち着いた内装で非常に上品。コースだったので、前菜の一つひとつが盛り付けも見せ方も、そしてももちろん味も素晴らしく。フレンチの名店なのでは……?と思わせる風格のある素敵な店だった。
まだ、オープンして半年程度らしく、ネット上の口コミもまだまだ少ない。繁華街の中にあっても穴場的な雰囲気もあるのか、私もお誘いいただくまでお店の存在自体を知らなかった。でも、一度来てみるとファンになる人が多そうだ。
連れてきてくれた方に伺うと、これまでに他の方を一緒に何度か訪れているらしい。まさに、なくなってほしくないお店に足を運ぶ、応援をしているんだな……というのを感じられた。
振り返ってみると、私たちの編集という仕事のコアスキルの一つが、「自分がいいと思うものを選ぶ」ことである。なぜこれがいいと思うのか? 裏にあるのは論理的な意見でも感覚的なものでもいいけれど、とにかく自分がよいと思わないと始まらないし、方針が決まらない。
たくさんのコンテンツを見たり聞いたりしていくなかで、自分の中に基準を作り、美学を作っていく。お店ならば今、他の人から評価されている流行りのお店かどうかではなく、自分が美味しいと思うか、いいと思うかが基準になる。それがないと、ただ頼まれたものをなんとなく作っただけ、になってしまう。
私はどう思うか、を常に考えること。たくさんインプットしていると忘れてしまうけれど、それが立ちどまって考えることなんだろうな。そして、いいなと思うことは応援したり、アクションをすること。そうすれば、お誘いした人にも「なぜそのお店がいいのか」を伝えられる。
暮らしの中にも、編集的なトレーニングは息づいているような気がする。今回、連れて行ってもらったお店は、すごくいい店だった。店員さんの雰囲気も料理も。私もまた、誰かをお誘いできるといいな。