年末に113km歩いたスペイン巡礼が、本当に最高だった話【社会人の冬休みでも】


日本でも少し前に書籍などで話題になった”スペイン巡礼”。小野美由紀さんの「傷口から人生」という本を読んで以来、「私もいつか歩いてみたいなぁ」と思っていた道。

とはいえ、日本の会社員である私はいきなり2ヶ月のような長い休暇は取れませんでした。しかし、よく数えてみると年末休暇に少し有給を合わせれば、ちょっと長めの休みが取れるのでは? そこで、思い切ったのが去年のこと。

これが………とても良かった!

総論を数字でいうと、
・予算10万円(私の場合は7万円)
・最低滞在日数7日間
・徒歩距離113km
・バックパック重さ8kg
でいけます。

ところが、春や夏の巡礼の記事はあるものの、年末・真冬の情報はあまりなかったので、社会人でもいける現実的な年末スペイン巡礼情報としてまとめます。ちょっとでも雰囲気が伝われば。

●そもそも、スペイン巡礼とは?

キリスト教の聖地であるサンティアゴ・デ・コンポステラ(スペインの北西部・ガリシア州の州都)を目指す道のりのこと。カミーノ・デ・サンティアゴとも。

最後にもらえる公式証明書では巡礼の動機を聞かれますが、信仰以外の理由も認められているので、キリスト教徒でなくても大丈夫。


↑ゴールのサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂(カテドラル)


巡礼のルールは驚くほどシンプル。街中や森の中など、あらゆるところにある黄色い矢印を追いかけるだけ。この矢印は全て、ゴールであるサンティアゴ・デ・コンポステーラに向かっています。ちなみに、歩いても自転車でも馬でも、途中の道のりでタクシーやバスを使ってもOKです。



ただし公式にゴールした証明書をもらうには、最低100km以上歩き(自転車だと200km)、その証明のスタンプを道中の宿やレストランでもらうことが必要。



この右に写っているのが、証明書である「クレデンシャル」。スペインをかけた壮大なスタンプラリーみたいなものですね。

私の場合は旅程も長くなかったのとまずゴールをしてみたいと思ったので、ギリギリ100kmを歩ける街から出発しました。

●年末年始スペイン巡礼の5つの魅力

ここからは、リアルに感じた魅力を5つに絞ってまとめます。なんとなく巡礼気分を味わってみてください。

▼魅力1:スペインの田舎の冬景色は、すばらしく美しい



田舎です。田舎なんです。スペインは都会も美しいのですが、巡礼の道は田舎なんです。

だが、それがとてもよい! 古いヨーロッパの街並みは、それこそファンタジーか童話の世界。出会う人もファンタジック以外の何もでもない。

「あぁ、世の中にはまだ牛飼いって職業があったんだな…」と思えるほどに、童話に出てきそうなレトロな雰囲気の牛飼いのおじいちゃんにも会いました。

途中で道ゆくおじさんにクルミを渡されて、「ワシの代わりにこのクルミを、巡礼の地まで持っていっておくれ」と頼まれる。ええ、持っていきましたよ。最後は割って食べたけど。(なにこれ、東京での生活と同じ時代と思えない。)

あと、いろんなレストランなどで急に音楽祭が始まったりして、巡礼者を楽しませてくれます。これも何ともメルヘン。



▼魅力2:新年をスペイン流に盛大に祝える

年末に歩く1番の魅力は、ゴールであるサンティアゴ・デ・コンポステーラで、新年を祝うルートでも予定が組めること。


↑カウンドダウンのために向かった真夜中の大聖堂。荘厳。


年末のカウントダウン時には、サンティアゴの大聖堂の広場の前に巨大なステージがセットされて、コンサートが開かれ、花火がバンバン上がっていました。このステージが置いてある、本当に!!! 大聖堂の真ん前ですからね。すごい人〜。爆音!!


↑全然、荘厳じゃないステージ。向かって右側は大聖堂。


みんなで飲めや歌えや踊れやの大騒ぎ。ちなみにスペイン式のお正月の迎え方は、ぶどうをカウントダウンに合わせて食べ、年越しまでに食べ切れれば幸運が訪れるというものだそう。全く知らなかったので、とにかく面白かったです。

▼魅力3:歩いている人が少ない分、国も年齢も超えて仲間ができる



20代のスペイン人からどう見ても70代のアルゼンチンのおばあちゃんまで。フランス、イタリア、ドイツ、リトアニア、アメリカ、中国、韓国、日本…と本当に世界中から人々が同じ目的地である「サンティアゴを目指していました。

でも最後には巡礼者同士が本当に仲良くなって、新年もみんなで集まって盛大にお祝い!

なんと年間に25万人もいるというスペイン巡礼の参加者ですが、さすがに年末のクリスマス休暇中は空いていました。1人で歩くと前にも後ろにも、誰もいない…! なんて時間も何度か。

それはそれで気持ちよく、自分のペースを保てますし、宿の確保にも慌てる必要がなくなり、とても良かったです。この写真に、アジア人が全然いないんですが、確かに日本人はほとんどいませんでした。

そして「人が少ないってことは、お友達ができないのでは?」という心配も不要。

オフシーズンのため、営業している巡礼宿(巡礼者向けの安い宿。アルベルゲと言います。)が少なく、一度出逢った友人とは次の街でだいたい同じ宿に泊まることになります。



昼間の道中は各自が好きなペースで歩き、夜に宿で再会。一緒に夕飯を食べたり、飲みに行ったり。またちょうどお昼頃に着く場所には必ずランチ営業をやっているレストランがあるので、そこでもワイワイ過ごせます。

写ってませんが、ガリシア地方はビールもおいしいんですよ! でも、歩いてるから本当に何でもおいしい!

▼魅力4:昼間が暑くないので、朝ゆっくりスタートできる



多くのスペイン巡礼の本には、昼間は太陽がきつくて歩くのが大変なので、出発は朝6時ごろに、と書いてあります。しかしそれは夏の話! 今は真冬。

暗い中で歩いても景色は楽しめませんし、とにかく寒い! 危ない! むしろ命取り!!

そのため私は毎日7時半頃に起きて、8時ごろまでに身支度をし、近くのバル(スペインのカフェ兼レストラン)でスペインのあったかくて甘〜いコーヒーと朝食を楽しんでから、9時頃に出発していました。

日の出が8時半頃だったので、出発時刻には明るくなってきており、日によっては霧がかかるなど毎日違うスペインの朝を楽しめます。私みたいにモーニングが好きな人はおすすめです。

▼魅力5:情報が少ないので、より冒険感がすごい!



冬の巡礼は人だけではなく、情報がとにかく少ないです。調べてもわからないことばっかり。しかしだからこそ巡礼をしている人はベテランが多い!

私が一番親しくなった友人は9回目の巡礼で、もっともベテランなおじさんは16回目と話していました。

そんな中、アジアの極東から一人で来た小娘は可愛がってもらえるので、いつだって役得です。日本じゃ味わえない(笑)

●冬だからこその注意点

わくわくしてきましたか? 書いている今、私はスペインが恋しいです。ただし、冒険には注意点がつきもの。楽しさの裏返しではありますが、絶対に気をつけた方がいいポイントもご紹介します。

▼注意点1:営業しているアルベルゲ(巡礼者向けの宿)やレストランが少ないので、ベテラン巡礼者と仲良くなろう!!



これは実際のアルベルゲ(=巡礼宿、一泊はなんと6.5ユーロ)の写真。綺麗ですよね。人の多い夏の巡礼ならば、なんとなく人の流れでついていけばちゃんと宿につくから大丈夫、という場合もあると思います。

しかし、冬は空いている宿が本当に少ない。場合によっては街に1つしか空いていないことも。その宿が見つからなかったら……、と思うと怖いですよね。あと夏は歩ける山道も、冬は危ないケースも。無茶な冒険はダメ、絶対。

どうしても、不安な方はピークシーズンを選ぶ方がいいかも。

▼注意点2:安全のためにも英語は最低限できるように。スペイン語も「旅の指さし会話帳」があるといいかも……



スペインの田舎の方では、ほぼ英語は通じません。そこまで考えついてなかったので、私は持って行きませんでしたが、もし可能ならば「旅の指さし会話帳」はあったほうが楽しいかも。

とはいえ歩いている暇な時間には、スペイン語をいっぱい教わりました。

ただ旅に必要な情報を得るためには、最低限の日常会話ができる程度の英語はできれば大丈夫。巡礼者の中には英語が話せる人が絶対にいます。私も日常会話レベルですが、それで十分でした。あとは、笑顔とボディーランゲージ。つまり伝える気持ちがあれば、十分伝わる!

あとスペインは日本と少し似ていて若い世代は英語ができるけど、少し年上になると英語ができないらしいです。困ったら若い人に質問しましょう。

▼注意点3:寒さ対策をすると荷物が重くなるので、バランスが大切



実は、最後の2日くらい、盛大に風邪をひきました(笑)理由は、重さの方が気になってドライヤーを持っていかなかったこと。

多少荷物が重くなっても、自分が暖かく快適に過ごせるとか、絶対に必要なものだ、と思うものは持っていった方がいいです。とはいえ、大体のものは現地でも買えるのでご安心を! どの街にもスーパーマーケットなどはあります。

日本のホッカイロをいくつか持って行ったら「Oh, Japanese technology!!」的に盛り上がったので、話題性と実用を兼ねるにはいいかもしれません。(2017年の実話です)

●私にとってスペイン巡礼ってなんだったんだろう?

最後に、ささやかながら私の巡礼の感想を。

巡礼に行こうと思う程度には疲れていたので、巡礼前の私の精神エネルギー値をマイナス20くらいだったとすると、巡礼後にはプラス50くらいまで回復していました。

その理由は、巡礼のシンプルな生活が、私の頭の中もシンプルにしてくれたんだと思います。

言葉の通じない遠国の田舎を、100km以上を歩く。しかも何が楽しくて8kgも荷物を背負って歩くのか。途中から足から背中から身体のいろんなところが痛んでくるし、荷物は重い。でも、毎日ただ歩いて歌って踊って食べて飲んで、たくさん笑う。今日、どこまで歩くかだって私の自由。

そんな時間を過ごしていたら、「なんか別に難しいことをやらなくても、今が幸せであることっていいな。こういう生き方できる自分も好きだな」と思えました。

そして極東の異国から1人で来た私に、この道の上であった人たちは優しかった。何もできなくても、私が笑顔でいるだけで、道ゆく仲間にはパワーになるらしく。だから私にとって大切なのは目の前の人に愛を持って接すること。たったそれだけでも、自分には価値があるんだ、と。何もできないからこそ、気づいたこと。

そして私は体力がなかったので、とにかく肉体の限界への挑戦でもあり、「はあ、ありえない!!こんな荷物背負ってこんな歩けるなら、日本帰ってから何でもできるよね?!!??!ほんとに!!!息が、上がるわ!!!」と非常につらかった3日目あたり(この日は28km歩いた)から無駄にエネルギーが湧きました(笑)自分のお腹の奥底のずーっと深くにあったエネルギーがもう一度呼び起こされるような感じ。

旅の最後に、スペイン人の友達から巡礼のシンボルの1つである黄色い矢印のステッカーをもらいPCに貼りました。



その人は、自分も巡礼の道に救われた、と話していた。だから、"Camino has magical power!!!"と。私もそう思う。

巡礼の道は、出逢うべきだった言葉と人に出逢う旅。冗談みたいですが、元気と、愛と、勇気をもらう旅でした。

●最後にリアルな情報まとめ

▼巡礼費用(約7万円)の内訳

・航空券:5万2000円(羽田→マドリード往復)
・宿代:6.5ユーロ×4泊、10ユーロ×1泊=36ユーロ(約4,400円)
・食事代+飲み物+行動食:平均15ユーロ×5日=60ユーロ(約7,300円)
・バス代:50ユーロ?(バラハス空港→サリア)+40ユーロ(サンティアゴ・デ・コンポステーラ→)
・事前に購入したもの:5,000円(寝袋、旅用のアメニティなど)
割合としては航空券代が圧倒的。私の場合は、航空券を格安取れたので、全体の費用を大きく下げられました。年末はオフシーズンなのか、航空券がものすごーく安かった!11月の今ならば、まだ安いのでは?
(他にマドリードとグラナダも旅行したので、私の場合は+3万円くらいかかっています)

▼年末スペイン巡礼・全体スケジュール

12月26日 スペイン到着(羽田→マドリード・バラハス空港→サリア)
 最初の宿をみつけられず、全然英語が通じず、路頭に迷う。
12月27日 サリア→ポルトマリン
 素敵な巡礼仲間との出会いに助けられる。
12月28日 ポルトマリン→パレス・デ・レイ
 巡礼の交流のルールがわかってくる。一気に友達が増えて陽気な旅になる。
12月29日 パレス・デ・レイ→アルスーア
 この日歩いたのは、28kmは自分には長くて、「自分スペインまで来て何してるんだろう…」と冷静になる。
12月30日 アルスーア→フィステーラ
 ゴール間近にして、風邪が悪化。声が出なくなる。でもみんな優しい。
12月31日 フィステーラ→サンティアゴ・デ・コンポステラ
 気分は、ほんとに最高! 溢れ出す達成感。すでにまた来たい。
1月1日 サンティアゴ・デ・コンポステラ
 新年のお祝い&教会のミサへ見学。素敵な街をのんびり探索。
1月2日〜3日:マドリード
 観光。美しすぎて、テンション上がる。
1月4日〜5日:グラナダ
 観光。アルハンブラ宮殿がやはり素敵でテンション上がる。
5日の夜:日本へ帰る
 まさかの初のロストバゲージ。ちょっと笑える。

それでは、みなさま。Buen Camino!!!(よい巡礼を!)